ファイト一発


fight 物を計る度量衡は国際条約で統一化されており、その単位もかつては厳重に保管された原器をもとに決められていたが今ではほとんどが量子化されている。SI単位での力は[N]ニュートンであるが、いまだに非SI系の単位で主に根性を計る単位がある。「ファイト」、「一発」である。残念ながらモノはフランスで手に入らない。フランスにはそのような製品も文化もないようである。昔、日本食材の店で見かけたような気がするが定かではない。一方、韓国系食材店には品揃えが豊富だ。何種類かサンプルしたの紹介しよう。
写真の一番右はいかにも「一発」なので安心して飲める。というのも韓国製品直輸入で表記がすべて韓国語なのだからこまったものだ。成分表でVitamin Dなんて英語があれば一目瞭然だが必ずしもそうではない。そのため右から二本目はなにがなんだかさっぱりわからない。店員はビタミン剤であるとは言っていたが。真ん中のものはビタミンという文字が読めるので「一発系」なのだろう。右から四本目、これも読めない。が、ラベルの中に漢字が並んでおりどうも漢方薬らしき雰囲気だがそこにたまたま「葛根湯」とある。なるほどこれは風邪薬か。一番左、これもなんだかよくわからないが、「感気薬」とある。風邪薬だ。韓国が漢字文化を捨てたと言うのは大変な損失ではないかと思ったりする。

ここからは与太話である。私が学生だった頃、日本はその歴史上最も繁栄していた時期だったと思う。その力の源は一発系飲料であり、しかし肉体系の飲料とは一線を画していたのであろう。一番豪華な箱に入った「ユンケル」など飲んだら一体どうなってしまうのだろうかと思ったりした。タモリの「ユンケル」と所ジョージの「ゼナ」(これは時代が違うかもしれない)はどうもおじさんくさかったが、時代を反映して攻撃的だったのはやはりシュワルツネガーの「アリナミンV」そして時任「リゲイン」だろう。アリナミンはあまりにアホだったので論外として、リゲインのコマーシャルのメッセージは強烈で、私は世界を駆けて24時間働くジャパニーズビジネスマンにあこがれたものだ。といっても戦時下の青少年らが愛国心から特攻隊員にあこがれるようなのとはまったく違う。あの歌をカラオケで歌ったビジネスマンもすくなくないだろう。
しかし繁栄が幻のように崩れた時、日本のビジネス尖兵がそろって癒しを求めたのには唖然としたものだ。こともあろうことか黄色と黒の御旗は地に堕ち、「癒し」の総本山となっていたのにはまったく裏切られた気分であった。癒されたいのなら首尾一貫「愛情一本」のようがよかろうに。

ろくでもない時間が流れて、ようやく日本に活気が戻ってきた時、あのリゲインの音楽がコマーシャルに戻ってきたのにはうれしかった。これほど景気回復を実感できるものはなかった。


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