むしパン


随分前のことだが珍しくスーパーで売られる工場製のパンを買ったことがある。近所においしいパン屋があり毎日バゲットやらクロワッサンが手に入ると「山崎パン」みたいなものは眼中になくなるのである。菓子パンならなおのことである。おやつをねだる娘に買ったパンは個別包装のチョコレート入りの小さなパンで、スーパーではパン売り場に無造作に並べられるその姿や量に驚かされ、またその賞味期限の長さに2度驚かされる。

mushipain 事件は10個入りのうち半分をすぎた頃に妻が偶然に見つけたものである。個別包装パッケージ内に虫がいるのである。蝿の形にパンが凹んでいることから、蝿は柔らかいパンに包装袋で押しつけられ即死だったのだろう。お楽しみのチョコレートパンを取り上げられ娘はご機嫌ななめだが、親としても素直にこれを捨てて次ぎのパンを与えるという気分にはなれない。
妻はさっそく、メーカーにクレームを入れるべきだと主張するが、はたして購入したスーパーに返品した方がよいものか迷うところである。こんなことが日本で起こったらどうなるのか考え事が頭の中を巡る。「OOパン製品に包装に虫混入」、「OOパン、消費者に購入済製品の返品を要請」、「昆虫混入パンの該当製製造ロットはx月x日製造品」、「OOパン、流通、小売網に全商品回収指示」・・・「OOパン、虫混入事件今期今期予定利益下方修正-10%」、「パン虫混入事件から学ぶ衛生管理」、「市民フォーラム、消費者の安全と権利」・・・これは大変だ!

昔、日本の大手パンメーカーの工場を訪問したことがあるが、清潔な設備で連続パン焼き釜からぞろぞろ出てくるパンは自動で個別包装されていた。作業区画で働く人は少なく、アクセスの要所にはビニールの暖簾がかかっていたりエアカーテンがある。天井には集中灯が青い光を放っている。つまり蝿が入るのは何千何万のパンのうちたまたま包囲網を抜け焼きたてパンに辿り着くことが出来た一匹であり、焼きあがったパンが次々と蝿にたかられるというわけではないはずである。とすると虫混入で製品回収騒ぎは大げさだし、業績が傾いたりはしないだろう。ちょっとだけ安心したところで、包装には消費者向けフリーダイアル電話番号が書かれているがはたして「お宅のパンに蝿が入っていたよ」で要領を得るのか疑問である。証拠写真、証拠物件を送付しようにも送り先は書かれていない。やはりスーパーに返品か?このあたりでもうどうにでも良くなってきたのでこの件はおしまいである。

もどる inserted by FC2 system