西洋わさび/Raifort


raifort これはレフォール/Raifortと呼ばれる、西洋わさびの一種をおろしたものの瓶詰めである。
その正体は学名で言うとArmoricia rusticana、英語で言うHorseradishであり、日本のわさび(Wasabia japonica)と同じ科のものであるらしい。が、日本のわさびはやたら清流を好むが、西洋わさびはどこにでも生える。栽培はごく普通の畑でこれといった手間も要らない。サイズも日本のものよりずっと大ぶりである。色はいかにも植物の根っこという真っ白であり、日本の緑色のような特別な感じはしない。
わさびというと刺身の盛り合わせに添えられたりするあのちょんと盛られたのを想像するが、このわさびはすりおろしてもまるで粘性がなく水っぽい。どちらかというとにんじんをおろしたような感じである。パリ界隈では一般的なものではないが、アルザス地方では料理の添え物として欠かす事のできないものである。そう、アルザスの典型的な肉やソーセージ類によく合うのである。わさびと呼ぶのよりもどちらかというとマスタード感覚である。そう、フランス人にこれは何?と聞けば必ずマスタードを例えに出すであろう。
味のほうはというと、おろしたてのものはいかにもわさびという日本のものにも通じるシッキリした辛さがあるが、辛さそのものは日本のものには及ばない。刺身には添えられるだろうが、すしには少々役不足である。写真のような瓶詰めとなるとやはりそれなりに加工されているからであろうが、辛味はずっと少なく、酸味が少々出て、生よりも水っぽい。しかし、アルザス料理に添えなくともわさび感覚は堪能できる。日本の料理にちょっと添えてもよい。お茶漬けに、焼き魚の大根おろしの変わりに、牛肉の焼肉なら和風洋風どちらにも通用する。わさびドレッシングもOK。アツアツご飯に乗せてしょうゆを少々というのが一番シンプルでおいしいかもしれない。生の本物が手に入るなら、千切りあるいはうす切りにしたものをしょうゆ漬けすると特製わさび風しょうゆが出来上がり、漬け込まれたわさび自身はなかなかの酒の肴である。
コテコテのアルザス料理のそえものだったはずだが、実際のところ結構和風である。日本の加工食品としてのわさびには結構この西洋わさびで増量されているものがあった。


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