フランスの塩


sel フランスの食塩というとどんなものが想像できるだろうか?岩塩を想像した人がいたとすればハズレである。フランス(パリ界隈)のスーパーマーケットの塩売り場で見つかるのはほぼ全て海塩である。

一番ダイナミックな塩は写真で袋入りで横たわっているもので、精製度の悪い粗塩である。海由来のべとっとした灰色の大粒の結晶であるが見た目とは裏腹に味がある。煮込み物にパラパラと入れても良いしパスタを茹でるのにもよい。新鮮な野菜には粗塩が一番、特に冷えた完熟トマトとの組合わせは最高である。

左の塩は食卓塩でこの中で最も精製度が高く、結晶の粒子も小さくさらさらしている。フランス人は味の薄い料理があるとこれをガンガンかける(人もいる)。日本の塩が国の独占事業だった頃の塩に近いものがあるが、数字の上ではアレほど精製されていない。日本の塩の純度はソーダ工業のレベルの高さを誇るに充分だったかもしれないが味気なかった。

コルクの蓋がついたちょっとおしゃれな容器に入ったのは塩の花/fleur de selと呼ばれる特殊な塩である。これも海塩ではあるが、塩田で析出する塩の最初の結晶を集めた手間隙かかったものである。海水から最初に析出するのは塩化ナトリウムで結晶は排他的に進むため純度は高い。

Nu saltと書かれた容器のもの、実はこれフランスのものではなくアメリカで見つけたものである。パッケージに書かれた売り文句はSodium free salt substrate、ナトリウムゼロの塩である。これで塩分制限があってもおいしく食事ができる。その正体は純塩化カリウムである。初めて見たときは、いかにもアメリカらしいギミックな健康食品かと思ったものだが、塩分の過剰摂取による循環器系疾患が背景にあるとすると存在意義は充分なのだろう。ところがこれで塩の代わりにおいしい食事が約束されるはずも無く、純粋な塩化カリウムはとんでもない味がするのである。塩辛い刺激はあるが、苦味と渋みがそれにも増して強いのである。乾燥昆布の表面に浮き出た塩をなめたときの刺激ある味が近い。

Lo saltはフランスで売られている塩でコンセプトはNu saltと同じだが、塩化カリウム2、塩化ナトリウム1の比で混ぜられた塩である。Nu saltより幾分ましではあるがやはりカリウムは強烈である。

海塩の名産ブランド地としてはBayonne、Île de Ré、Camargueなどがある。これ以外に調味塩としてハーブ入りの塩などがある。

さて、岩塩だが自然食品などの専門店に行けばあるのだろうがスーパーではまだ一度もお目にかかったことが無い。もしかして岩塩は採れないのだろうか?岩塩が期待できそうなドイツ国境のアルザス地方(ここもあまり北に行くと海が近くなってしまう)、サヴォア地方(山に阻まれているとはいえ地中海はすぐ)なんかはどうなのだろう。


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