ためしてガッテン「水」

NHKためしてガッテンの比較的最近の回(2002年1月頃)である「水」を特集した回のビデオを入手して見た。さすが教養番組のNHK、「あるある」とは一線を画す内容であった。
水道水とミネラルウオーター、硬水と軟水の違いを正しく説明し、用途に応じた向き不向きを官能試験で示していたが、感覚的というか暮らしの情報に徹した姿勢がよい。ここで各イオンの濃度とその効能と言った詳細な話になると科学の一線を超える可能性がある。
海洋深層水では当たり前だが素朴な疑問、「海水は飲めるのか?」を詳細に説明している。海水を逆浸透膜で脱塩した後、もとの海水で直接ミネラル添加あるいは海水の硬度分を分離して添加してミネラルを調整しているというが、脱塩直後の水をミネラルが除去されたタダの真水と言いきってしまうのが実に印象的である。このタダの真水にミネラル添加量を調整することでさまざまな硬度の水を作ることが可能だがこれでは原料こそ天然物だがいかにも人工成分調整水である。番組出場者が深層水を試飲する場面では誰もがまずい顔をしていた。
アルカリイオン水に至っては、厚生労働省の定める効能である整腸、制酸などの効果以外には冷淡。アルカリイオン水で活性酸を分解という噂の効能は実験付きで完全否定。電子スピン共鳴の結果は何の差異も示さなかった。
科学的な説明では科学の道を踏み外さず、薬事法を尊重し、詳細な効能作用よりもより実用的な例を出す、じつに模範的な教養、科学番組であった。不確かな論理を裏付けるために権威に依るということも無い。強いて難を挙げるならば盛り上がりに欠けるということである。ここでいう盛り上がりとは放送日翌日に特定商品が大いに売れるとか番組で取り上げられたキーワードが健康法として週刊誌の見出しを飾るなどの原因を指す。
一点だけ難癖をつけよう。深層水の解説で以下のような表現があった。北の海で冷やされて比重の大きくなった水は急速に深海にもぐりこみ、深層を循環する。室戸岬にいたる深層水は数百年から数千年隔離された水である。深層では太陽光線が至らずほとんど生物活動がなく、表層から隔離されているので汚染が無い。深層水は人の手がまだ入っていないきれいな水と印象付けるのもであるが、たしかに人為的汚染物質に関しては正しいかもしれない。しかし長旅を経た深層水が常に汚染とは無縁の深海にあったとしてもその上の表層ではごく当たり前のように生物活動があり生物(おもにプランクトン)の死骸はマリンスノーで知られるように深層に降り注ぐ。沈降する死骸は沈みながらかつ分解される。ゆえに年代の古い深層水はそれだけ沢山の生物死骸の再生物を含んでいるのである。


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