純水

浄水機などではなくより高度な水処理によって精製され不純物が除去された水、純水。
伝統的な水の精製方法としてまず最初に挙げられるのが蒸留である。水道水など不純物を含む水を沸騰による相変化で溶媒としての水のみを気相に分離し、再度凝結させることによって純度の高い水が得られる。その水処理方法としては不純物のフィルターによる分離、活性炭などの吸着体による除去電磁波による特定成分の不活性化などが挙げられ、より純度の高い水を製造するにはこれらの水処理が効率良く組み合わされる。食品、医薬、諸処の化学工業の現場で純水は今日も活躍している。
もっともお手軽に手に入る純水といえば薬局で市販されている日本薬局方精製水である。化学実験を行う実験室には一つぐらい純水を作る装置があったりする。
一般的に、不純物がほとんど取り除かれた純水はおいしくないと言われるが確かに味気ない。それもそのはず、本来あるべき水の味、それをなすミネラルがほとんど含まれていないのがから当然である。しかし考え様によってはこの何も含まない水こそが本当の水で、この何の味もしないのが本当の味、水そのものの味といえる。世の中のおいしい水、まずい水、くさい水はこれにその味覚に相当する不純物が適当なバランスで含まれているのである。したがって純水がまずいというのは不当な評価である。もっともうまいまずいという判断は個人の主観的なものであった定量分析的判断は向かないしそこにはゼロはない。
純水がまずいもう一つの理由はその管理にある。実験室の純水を飲んでもおいしくない。たいていゆっくり蒸留されてきた水をタンクに貯めてあった純水であるためタンクのプラスチック臭がしたり、長時間室温で放置されていたのでぬるかったりするのである。出来立ての純水を良く冷やして飲めば、混じりっけなしの本当の水の姿がわかる。
純水が威力を発揮するのはその水でお茶をいれるときである。日本の緑茶は極度に硬度分すなわちカルシウムなどのミネラルを嫌う。ミネラルをほとんど含まない純水を使用して、水出しなど低温でゆっくり抽出した緑茶は苦味渋みがまったくなく、香り良く、甘味うまみが引き立つ実に良いお茶となる。
実験室にある純水などは当然飲用ではないし、純水製造の装置も飲用目的に設計されておらずたとえその純水が飲用水の基準を満たしているとしても飲んではいけない。装置メーカーも取扱い説明で飲用を禁止している。飲みたいひとは、水溜りの水を飲むのと同じ覚悟で飲まなければならない。それほど汚い可能性があるというわけではなく興味本位で行うことは個人の責任でということである。
最近では飲用の純水がミネラルウオーター同様にボトル入りで市販されているらしい。

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