キャッシュレス社会


フランスはかなりキャッシュレスが進んでいる。買い物などの支払いは、支払う金額にもよるが、たいていカードか小切手である。
カードはクレジットカードではなく銀行の預金口座のカードで、これを買い物などの支払いの際に使用できる。カードを支払い端末に挿入し、支払い金額を入力し(店員が入力)その後カードの所有者が4桁の暗証番号を入力すると、オンラインで銀行口座の預金から引き落とされて支払いが終了する。日本ではまだなじみのないデビットカードである。これが極めて広範囲に浸透しているので買い物のときに手持ちの現金を気にすることなどほとんど無くなる。店舗によっては使用できる最低金額を設定しており、スーパーマーケットなどではたいてい100フラン以上からの使用が受け入れられる。しかし一方で各種の自動支払機、たとえば駐車場の料金、高速道路の料金、メトロの切符地銅販売機などでは小額から受け付けてくれる。このカードCarte BancaireあるいはCarte Bleuと呼ばれており、一般的なクレジットカードであるVisa、Masterとは別である。銀行の預金口座開設で作成できる。もちろんこのシステムが使用できるのはフランスの国内だけで国外に出たときにはクレジット会社を通じることになる。カード作成時にVisa、Masterなどのクレジットカード機能を加えることも出来る。
カードにはメモリーチップが内蔵されており、支払い時の端末との接続はこのメモリーの内容を使用し銀行口座や暗証番号を参照する。同時にカード裏面上辺には従来の磁気記録も持っている。暗証番号の入力を本人確認の手段として、クレジットカードのようなサインは不要である。買い物の支払いのとき、このカードのようにカードを端末に差込み暗証番号を入力するのと、従来のクレジットカードのように伝票にサインをするのではどちらがスマートか?サインの習慣のない日本ではなんとも判断しがたいが、暗証番号方式のほうがスッキリしているように見える。カードと接続する支払い端末は、スーパーマーケットなどではレジなどに組み込まれているが、レストラン、カフェなどではワイヤレスのポータブル端末型になっており、テーブルでの支払いに威力を発揮する。

一方の小切手はこれもまた銀行口座の預金に対して支払うのもである。小切手帳の1枚づつが記入しただけの金額の通貨として使用できる。記入する内容は支払い金額、受取人、支払い場所、日付、そしてサインである。これだけであらゆる場面での支払い、たとえばスーパーマーケットでの支払い、あるいは銀行からの現金の引き出しなどに使用できる。ここで注意が必要なのは金額を数字でではなく単語で記入しなければならないことである。たとえば360.55フランならば全てフランス語でtrois cent soixante francs cinquante cinq centimesとなるのである。日本流では21000円が、金弐萬壱千円也というところである。これはかなり難儀であり、フランスでの買い物で請求された金額を正しく聞き取ることの次に来る難関である。もちろんフランス人にとっても面倒なことで、スーパーマーケットの支払いでこんなことをいちいち記入していたのではとても時間がかかってしまう。前述のカードを差込んで暗証番号のスピーディーさにはかなわない。そこでスーパーマーケットのレジでは自動印刷機が設置されている。支払いの段階で未記入の小切手を印刷機に入れると全ての情報、もちろん面倒な金額も印刷してくれてあとに残されているのはサインだけである。
受け取った小切手は発行された口座開設銀行の店舗窓口で換金することができるが、カードの場合オンラインで決済が済んでしまうのに対し小切手は物理的な手間がかかるので小さな店舗やレストランでは受け付けてもらえないことがある。店頭での使用ではカードより幾分使い勝手が悪い小切手であるが、他では変えられない大きなメリットもある。たとえば個人で開業している医院、諸サービス業関連では、おつり用の現金はおろかカードの端末などを設置する必要も無く支払い金額を正確に授受することができるのである。取引される金額がそれほど小さくなくまとまっているので換金する手間もそれほど問題にならない。また、通信販売や郵送での支払いでは、何しろ紙切れ1枚であるので、簡単に送ることが出来る。小切手を換金できる受取人を指定できるので郵便が万が一第3者の手に渡っても安全である。

このようなキャッシュレスの生活を日常目の当たりにすると、現金を主体とした支払いがいかに面倒かが実感できる。財布の中身はいつも小銭と50、100フラン札が1、2枚程度になる。現金で支払おうとすると店側におつりが無いなどの困ってしまう場面が多くある。特に、日本の銀行や空港で両替すると主に渡される500フラン札。こんなものを日常使っている人はいない。


小切手と銀行カード
小切手は50枚つづりの帳面になっている
カードの左端に見える金色の楕円部分がメモリーの端子
Banque Nationale de Parisのもの


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