エスパス


espace1 フランスに来てから2台目の乗用車がこれ、ルノーエスパス/Renault Espaceで写真のようなモノスペース、ミニバンである。該当する日本車はトヨタのエスティマであるが、町を走る現エスティマよりはどうも一回り小さいようである。なおこのネタを描いている2004年9月でこの車種はすでにメーカー廃盤で、モデルチェンジされた新型に置き換わっている。
比較的大きな車であるので車内空間もかなりのものであるが、それ以上にデザインに起因するところが大きい。ダッシュボード、計器上の空間はそもそも操縦性や居住性とは直接関係ないのだが、ここが広いとなんとなくゆったりした気分になるものである。あっさりしたセンターコンソールも一役買っている。通常の乗用車ならこの当たりに各種ボタンが並んでいるはずだがここには一切ない。空調コントロールは左右両端にまとめられ、オーディオ関連はボタンすらない。パイオニア製の6連CDプレイヤは後部の隠し扉内に収められているが、コントロールはミニコンポ付属のようなリモコン操作である。このすっきり感のお陰で、高級車にあるようなコテコテの豪華さはまるでない。大きさ相応の価格の車ではあるが、ターゲットは子沢山一家のファミリーカーといった感じで実用性重視である。一方、現行モデルではデラックスさを強調する広告が目立つ。

espace2 espace4 車内は3列座席で前から2+3+2のレイアウトだが標準で3列目の2席はついていない。オプションである。そこには座席を取り付けるための床レールがあるだけである。2,3列目の座席は全て共通なので3列目の座席が無くとも2列目の座席を持ってくることも出来る。2列目を取り払い3列目に2席とすると、足回りの空間が大きく、居住性は最高で気分はリムジンである。どうしても全7席必要な時は同車種のオーナーから席を借りることも可能である。座席を全て取り払ってできる巨大なトランクにはセミダブルベッドが納まるほどである。
この車で特筆すべき点がいくつかあるが、一番はやはりボディの外装がプラスチックで出来ていることである。エンジンの熱がある前ボンネットはさすがに鉄で出来ているが、それ以外は繊維強化プラスチックで指で軽くはじくと期待はずれの音がする。当然事故などでぶつけるとへこんだりしないがひどい場合には亀裂が入ったり割れたりする。一方、引っかき傷でも地はプラスチックなので放置してもそこから錆びる心配はない。また炎天下でも外板が鉄板のように灼熱することがないので車内温度も違うことであろう。車体の軽量化に貢献しているのだろうが探せばいろいろ一長一短みつかるものである。しかし最大の弱点は、これはもしかするとこの車種最大の設計上の欠点といえるかもしれないが、プラスチックゆえに壊されやすいのである。運転席側の扉にある鍵穴横に穴をあけて開錠して車内を荒らす車上荒らしにはこのプラスチック外板は弱いらしく、おっとは2度被害に遭い、修理工場でも「この車に良くあること」といわれてしまった。

espace5 もうひとつ、この車のデザインの目玉とも言えるのがサイドミラーの構造である。今時の車ではサイドミラーはすべからく運転席、助手席のドアについているものであるが、この車はドアの付け根の先、エンジンルーム後端、フロントグラス前端位置についている。これは単なるデザイン上の特徴ではなく、運転する上でもかなりあり難いことである。ドライバーの両サイドミラーへの視線は一般的なドアミラーではハンドルのある線上まで移動しなければならないところ、この車では視線移動が随分小さくて済むのである。ハンドル前のやたらと広い空間やその両脇の三角窓はだてではないのである。このデザイン、続々モデルチェンジされるルノーの車にも、他社にも無く、現行車種で残っているのはルノーのトゥインゴ/Twingoがドアミラーではなくボディ直付けくらいである。 また、ミラーの付け根のデザイン、通称チーズ削り(日本風に言うならば大根おろし)もだてではなく車内への外気取りこみはここから行なわれる。ヨーロッパのウインドウウオッシャー液は冬の不凍対策から混ぜものが多く大変臭い。そのため香料を入れているものも多いがそれが的外れな香料で一層臭い。この位置にある吸気口はウインドウウオッシャー液の臭い吸入対策にも一役買っている。

espace6 ヨーロッパではディーゼルが主流で、この車もディーゼルエンジンを積んでいる。ターボつき2リッターエンジンであるが、旧時代のもので静寂とはいい難く、アイドリングでもガラガラ特徴的な音を発する。加えてこの図体と重量では良い燃費は望めない。街乗りと郊外準高速でリッター12キロメーターはなかなか越えられない。以前乗っていたLagunaは2リッターディーゼルで16キロメーターは達成していた。これはエアコン作動込みで、一度エアコンを切り、タイヤ空気圧にも注意を払ってリッター15キロメーターを達成したことがあった。最新のディーゼルでは燃料噴射に仕掛けがあり、燃料は超高圧で噴射され、タイミング、時間、噴射速度までコントロールされ、騒音から燃費さらには排ガスまで改善されているそうな。

個人的にはとても気に入っている車だが恨み言もある。車上荒らしはもう繰り返す必要がないが、結構なメカトラブルにも見まわれた。ディスクブレーキのディスクが割れたがこれはただの初期不良であろう。極めて不思議な現象だがタイヤが変形するということがあった。これもただの部品不良であろうが、どうもこの車の前輪への荷重負荷はどうも適切でないようで、前輪はタイヤ外側のみ妙な減り方をしていた。減り量も尋常ではない。エンジンオイルは10000キロも走ればどこかへ消えてしまい、15000キロ時の一回目の定期交換のときには交換すべきオイルはすでに新品であった。電装関連の問題は深刻で、まずメインコントローラーとオーディオ関連の制御が切れた。オートロックが壊れた時は車は駐車時にも電源が入ったままの状態であった。その他コントローラーが丸ごと壊れて動かなくなることは無かったが、一部機能が失われ走行距離をカウントしなくなることもあった。この速度計回りのトラブルはかなりのもので、計器盤のデジタル速度表示が正しく表示されず、ゼロ、通常速度、2倍速度がかわるがわる表示されるということが起こった。回路が速度を拾ってくるタイミングと平均値を出し表示するというタイミングが狂ってしまったのか?高速道路で法定速度で運転していても表示は255km/hとなると、「時速250キロ〜」の「ひかり」を凌駕したかとおもってしまう。当然だが、車窓から見える並走するTGVには倍近い速度で追い越されるのである。計器類の液晶パネルのバックライトが死んでしまったこともあった。ウインカーの点滅速度が気まぐれで変わるというのもあった。

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