ユーロの悲劇


おことわり
これはいわゆるネット告発でもなければ特定企業への中傷でもない、実際に起こった現象の分析であり、再発防止のための警鐘である。この現象を時系列的に追う限り当事者のだれもが違法なことを行っていないし、表面上不利益をうけていない。これを開示することによっても不利益を生じることもないと考えられる。人間および人間の作ったシステムに完全なのものはなく必ず過ちを犯すという前提で物事を考えるべきで絶対と言うことはありえない。リスクをいかに認識していかに管理するかが重要なのである。

事の発端はウチの両親を招待する往復航空券の購入である。購入は旅行代理店X、支払いはクレジットカード会社Y、支払い金額は2054E68であった。支払いのトランザクションがおこなわれたあと、このカードを使用したのは11/24でこのとき食材店Kでのカード支払いは拒否された。同日スーパーマーケットAおよびCでも拒否されたが何かの操作でOKとなる。26日にはネットで注文していたものがカード会社の承認がおりないとのメールで送信元のサーバーは11/23付けで送信している。不信に思いカード履歴を調べると13477E82の請求がありカード限度額を超えるため使用不可となっていた。ちなみに13477E82というのは無意味な数字ではなく2054E68のフラン相当額の数字である。
巨額のクレジット請求の件で妻はかなりご立腹であるが、化学に携わる身としては何が起こったのかこれを冷静に分析するのが責務であると思う。もちろん化学の力で解明される問題ではない。科学的論理的に考えるということである。

問題の支払いはこれである。確かに支払いは2054E67であり、何ら問題はい。これがクレジットカード支払いの控えである。なおこれ以降、証拠物件のうち差し支えのある部分は消してある。

11/26時点でのクレジットカード利用履歴がこれである。いまどきはカードの使用履歴がインターネットで見ることが出来るのでとても便利だ。11/19付けで13477E82の請求が来ている。これによりカード利用限度額がゼロになっているのはいうまでもない。ここにはまだ拒否されながらも無理やり支払った11/24のスーパーAおよびCでの請求は見えていない。
旅行代理店Xに確認の電話をするが2054E67の請求は間違い無く行われていると言う。何よりカード支払いの控えがその証拠である。

更なる情報を求めてクレジット会社に電話。ネット上の履歴と同じく13477E82の請求が入っており利用可能残高はゼロである。これでここ数日の支払い拒否は納得がいく。もちろん13477E82の支払いに納得するはずがない。カード支払いの全トランザクションパスを調査するとの事であるが、それには1月を要するとのことである。
こうなるともう手も足も出ない。カード会社の調査を待つしかない。それにしてもこのカードが使えないのは惜しいことである。フランスの銀行のカードもあるのでさし当たって支払いに困ることはないであろうが、日本のカードも生活の一部なのである。

急転直下11/28のカード利用履歴には11/19付けで13477E82の払い戻しが入っている。合わせて11/24のスーパーAおよびCの請求も入っている。利用可能残高も復活だ。念のためカード会社に確認の電話を入れるとまさにネットで見ている履歴と同じだそうである。加えてまだ請求履歴に入らないところで旅行代理点Xと思われるところからは11/20付けで2054E67が来ているとの事である。

これで実世界で何が起こったかほぼ明らかになった。11/19に旅行代理店Xは2054E67のところ誤ってそれ相当額のフランにあたる13477.82をフランではなくユーロで請求したのである。そして誤りが直ちに発覚したので即在に同額を返金したのである。カード拒否によってこのような+/-の二重登録になるかどうか明らかではないが11/24付けの食材店Kでの履歴で明らかになる。ここでは3度トライして3度拒否されたのでこのような表示になるならば3度支払い、払い戻しの表示が出るはずである。今のところそのようなものは履歴に出てきていない。

疑問点は2つ、最終的には同日に行われたと見られる13477E82の支払いと返金がこれほどまでのタイムラグを伴ってカード会社の電算機に現れたのか、そして一時的にであれ利用限度額を超える支払いが成立したのは何故か。後者についてはさらに利用限度額超過で一度はカード拒否にあっているにもかかわらずその後のカード読み取り機の操作により支払いが成立しているのも疑問である。

11/26および11/28の利用履歴を比べると支払い自体は常に発生順に電算機に現れていると言うわけで無いことがわかる。10/31の請求というはるか昔のものが11/28になってようやく現れたり、カード会社の証言にあった11/20付けで再度正式金額で請求されている旅行代理店からの2054E68もまだ見えていない。ここで興味深いのは旅行代理店からの2054E68の請求が11/20付けになっていることである。カー ド支払い控えには確かに11/19, 16:01:32となっている。しかし、今の時期CET16時は日本時間で翌日の0:00である。2054E68の請求がこの時刻に行われ、先の間違った請求と払い戻しがその直前、日本での日付変更付近で行われていたとすると日付変更に伴う処理によるトランザクションの遅れも考えられなくも無い。いずれにしても支払いは発生順にカード会社の電算機に登録されるわけではない。利用限度額を超えた支払いがなぜ承認されたかは全くの謎である。

問題点そしてカード処理で目に見えない部分を考えてみる。
事の発端は旅行代理店Xが誤ったカード引き落としを行ったことであり、これが無ければ以降のすべては起こらなかったのである。誤りに気づいて同額を返金するというのはカード支払いの訂正においては標準のプロセスと思われる。しかし支払いにについて問い合わせた際、旅行代理店はこのことには全く触れていない。電話で対応した方と実際にカード支払い操作をした方が別であれば仕方の無いことではあるが、この事実がわかっていれば後に奔走することは無かった。
次に何ゆえ利用限度額をこえる支払いトランザクションが成立したかである。さらに限度超過状態にありながらその後2度も支払いが出来たと言うのもおかしい。限度額と言うのは有名無実のものなのか。 同日に処理されているはずの誤った支払いとその返金のデータ処理のタイムラグも問題である。支払いの際にカード端末では何やら通信処理をしているようであるが、金額とそれに合わせた支払承認くらいの通信のように思える。そして情報を受け取ったクレジット会社の電算機のほうもこの時点では即座に決済処理をはじめているわけではなく支払として上がるのは後ほどになる。このケースでは実際の引き落とし前にすべての方がついたが、この両トランザクションの間にカード締め日がきていたらこの大金が銀行から引き落とされていたことになる。銀行にそれだけの預金が無ければ信用情報に傷がつく。さらにはこれが旅行中の出来事で支払い可能なのがこのカード一枚であった場合には路頭に迷うことになるのである。
以上がすべてである。推測のなかに「そんなことはありえない」とおもわれる部分があるかもしれないが、これが実際に起こったことである。最後にこのようなことが再び起こらないための対策としていくつか列記する。
店員はカード支払の端末からの金額入力を間違ってはいけない。しかし、カード支払においてもっともエラーが起こりやすい人間の手が介在するここの部分でリスク低減を求めるのは難しいことである。 求められるのはカード支払トランザクションのリアルタイム化である。支払も返金も即座に行われていればこのようなことは起こらない。
利用限度額はカード会社側で遵守すべきである。さもなくば世界中で使えるデビットカードを用意すべきである。2002年からは銀行口座にIBANというコードが使われるようになり国、銀行、支店、口座番号がこれ一つで管理されるようになるのである。デビットなら預金口座から直接引き落としなので限度額を超えるということは絶対にない。
運悪く利用限度額近くの支払が誤って行われてしまった場合、即座に返金手続きがなされたとしてもこのようなことが起こりそのカードは使えなくなるという最悪の事態を利用者の側としてかくごしなければならない。

最後になるが冒頭で誰も損をしていないと書いたが、実際のところ損をしているのは他でもないこの私である。確認のために費やした時間と心労は金には替えられないのである。これ以上の損害は無い。ホームページのネタ、タイムリーなネタでしかもかつて無い超大作になったことを喜んでいるということは決して無い。

クレジットカード会社からの最終利用明細がこれである。

仰々しく書き始めたこのネタも気がつけばアップする前にすでにユーロ通貨導入どころかフランの流通停止まで経て完全に過去のものになってしまった。もうこんなことはおこらないであろう。

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