国境無き医師団


国境無き医師団というのは何年か前にノーベル賞を受けたNGOでその名がフランス語であるようにフランスで発足したものであったはずだ。フランス語での正式名称はMedecins sans frontières。ちなみに医師団が受賞したノーベル賞といってもそれは医学賞ではなく平和賞の方であるというのは蛇足であろう。医師がボランティアで国境を超えて活動する、何とも尊いものであろうか。

ところで国境無き医師団ならぬ国境無き記者団というのも存在するようである。調べてみると.orgのウエブサイトがあるがどこが本拠は良くわからない。そもそもRSF, Reporters sans frontièresというのが正式名のようだがどうもしっくりしない。記者ならフランス語ではjournalistesのほうが一般的で、reportersはどうも記者でも特別な感じがする。特ダネをねらうフリーの記者や写真家のような。とするとどうも「医師団」のようなボランティア的、献身的活動グループというよりもどうもフリーランス・ギルドのような感じがしてしまう。特に記者団なんて記者を団体で扱ってしまうと、「記者団」が日本の言論システムの恥部と指摘する日本独自の記者クラブにも通じる感じがするのである。もちろん「記者団」はそんな団体ではなく、彼らのサイトを訪れればすぐにわかることだが世界の言論管制、最近ではネット監視などの問題と正面から立ち向かう「医師団」も負けぬ活動をしている。そう、医師団はアフガンで標的になり数名の医師が犠牲となったが、記者は常に言論という極めてデリケートな部分で戦っており、イラクでも犠牲者が多数出ている。

しっくりしないのはreporterだけではなく、国境無き/sans frontièresの方が大きい。医師団と記者団とでは国境を超えることの意味が違うからである。地域に根ざした、市民のそばにある医師がボランティアとして他の国で活動するということが尊いのであって、記者団が国境を超えるのは当然のことである。記者がもはや内側からその実情をそとに伝えることが出来ない地で、かつ当局の目を盗んで活動するというところが尊いのであり、記者が捨てるのは国境という枠組みというよりも記者自信の持つ地位としての枠組であろう。そしてそれは記者団という団体ではなく記者個人のそれである。

以上の2つを考慮した最も適切であると思われる名前は、国籍無き記者/Journaliste sans nationalitéである。

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