パリ当世LRT事情


好評に答えるべく「テツ」第二弾である、って同時にアップしておいて好評なんかあるはずもない。しかも前回とあわせてちっとも鉄道じゃない。

tram photo 1 このところといってもこの数年のことなのだが、パリに行くたびに車の運転が面倒になってくる。まんねん渋滞の事情を差っぴいてもよくないのである。それはいたるところで道路工事が行なわれ、それが終わるころには車線が大幅に狭くなっているからである。ではもともとあった広い車線分はどこに行ってしまったかと言うとバス専用レーンになっているのである。その上LRTである。

tram photo 2 LRTとはLight Rail Transitの略で、要は未来版ちんちん電車である。電車の容姿や設計が未来であると同時にその思想が未来環境志向なのである。大都市での交通を自家用車から公共交通に切り替えるのが鉄道であり、排ガスを出さない電車であり、建設費が地下鉄に比べてべらぼうに安いのがLRTなのである。 LRTにはいくつかのキーワードがある。おしゃれなデザイン、バリアフリーでユニバーサルデザインの低床設計、町の中心街から車と排ガスが消えて、広い道路にはオープンカフェがでる。日本でLRT導入運動で引き合いに出されるのが決まってストラスブールのトラムであるが、長崎や熊本のシンボルにもなっている古い市電だってアムスデルダムのトラムのようにいい線行っているのではと思うのだが。もちろん町に車を入れないよう、辺縁の駐車場がセットで必要なのである。 写真はパリの南西、15区セーヌ河岸からパリの下半分を13区中華街前まで進む建設中のトラムで、撮影は2006年9月のものである。電車は走ってはいるもののまだ開業前でこの時は運転手の教習中であった。写真のあたりはもうすっかり出来上がっているように見えるが、現在最後の調整をすすめており、開業は2006年12月中旬である。

道路と交差しない軌道面には芝が植えられている。これは景観上も美しいがこれによりヒートアイランド現象が緩和されると言う効果も期待されている。詳細は、http://www.tramway.paris.fr/まで。東京の中心はこのような方法だと町の大改造を伴うが、地方の大都市ならうまくいくはず。一式いかが?
track

と言うのが写真撮影直後に準備していた原稿であった。写真のタイムスタンプは2006年8月とあるが、すっかり忘れていた。気が付くもう12月でテレビでは開業間近であると。初日は無料らしい。

navigotram on platform しかしまたしてもアップするのをわすれた。今度は2007年の夏である。暇ができたので乗ってみた。鉄道はのってナンボ。しかも乗りテツに目的地はなくただ乗るだけである。
たくさんある乗降口からのると目に付くのがこの改札装置。乗客を見ていると「きーん」というチャイム音も聞こえる。丸い的のような部分、ここはRFIDのセンサー部分でNavigoという非接触定期券が使えるのである。スイカのようなものであるが、パリと近郊はゾーン制の一律料金なのでシステムは比較にならないほどシンプルであろう。これとは別にパリのバス、メトロ切符が使える改札機もある。切符を差し込むと、打刻というか数字を印刷してくれるが、メインは磁気テープ部分の情報である。

joint1joint2 連接部分がとても広いので車内の見通しはとてもよい。先頭車両から最後尾まで一望できる。また窓も大きく景色がきれいだ。日本にはどうしてこのような電車デザインが無いのか不思議である。札幌市営地下鉄くらいであろうか?それも火災対策のため車両間ドア設置が義務付けられると言うから残念。いや、札幌地下鉄をほめるのはどうか。あまりの変態設計のため高くついているはずだし、赤字もとんでもない。と思っていたら、もっとも変態的な南北線は単独では日本の公共鉄道でも数少ない黒字経営をしているそうな。おっといらぬウンチクで脱線した。これだからテツは困る。しかし次回は札幌名物、地下道に囀るすずめの鳴き声の話をしよう。

cockpit 開放感のヒミツは運転台にもある。運転席が客車から丸見えなのである。かぶりつきではあなたも運転手気分。それにしても運転台が高度に電脳化されているのには驚く。長い電車をワンマンで運行するため安全監視モニターも備えている。しかし外から見るカメラの存在はまるでわからない。製造元のALSTOMはTGVあたりでなんかイヤな感じのする会社であるが、これはすばらしい。日本もLRTをいれるならこの会社からかな?

barrier freeplatform 停車場もかなりのものである。電車とプラットフォームとの段差はきわめて小さい。電車自体がとんでもない低床であるうえにプラットフォームは道路にすっかり溶け込んでいる。歩行者のアクセス路である横断歩道からじつに滑らかな坂でみごとなバリアフリーを実現している。1世紀以上前に開業したメトロとは正反対である。道路の狭い日本でも、この敷地をケチってはいけない。ついでにJCDecaux広告入り電停なら建設コスト削減の上、日仏関係も安泰だ。拝啓都知事殿、一式いかが?しかし彼はサルコジ氏のようなタイプが嫌いなんだろうなあ。しかもフランスから買った銀行で融資が焦げ付いて大変なことになるというケチがついているから。


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