Twingo秘話


twingo Renaultの最高傑作小型車Twingoの開発にまつわる裏話である。この話が本当かどうか?、細部はともかく少なくとも現状との辻褄は合っている。ネタの出所は夫の会社の同僚である。ではお楽しみ下さい。なお、写真はルノーのサイトからのリンクです。

Twingoはある意味Renault開発陣の試金石であった。開発は社内でもおもに若手によって行われたが、その情熱によって会社上層に製品開発を了承させたという。その情熱とは、ターゲットは「若者」である。それまで経済力の無い若者は自動車がほしくてもポンコツ中古車になけなしの金をつぎ込むしかたかった。そんな彼らに光を、小型だが4人がゆったり乗れる、安くて上質の新車を。
経営陣は簡単にOKを出さなかった。若手のとっぴな計画に不安を感ると同時に成功が確信できなかったのである。リスクを抑えるため了承と引き換えに突きつけられた条件は、極めて限られた開発費と開発陣、そして厳しいコスト設定であった。コスト削減の為に徹底的にパーツ類は見なおされ、やはりコスト削減のため右ハンドル仕様は計画から消された。左右両ハンドルを考慮すると車体が高価になるのである。装備グレードに応じた車種などはなく一種のみ。

そうして出来あがったのが今日のTwingoである。発売当時では斬新にして愛らしいデザイン。フランス国産車の中でも最小クラスの車体には1.2Lのエンジンが納まっており、加速性能から燃費まで他のクラスにひけをとらない。
そして会社上層部の不安を吹き飛ばすかのように爆発的に売れた。特徴的なデザインもあって街で見かける車ナンバーワンになった。しかし大きな誤算があった。当初ターゲットとした若者にはそれほど売れなかったのである。若者、特に男性にはそのデザインは可愛すぎたのか。代わってもっと大きな需要をもたらしたのが、一家に二台目、熟老年夫婦、街乗りのファミリーカーというところである。当初より大きな市場を手に入れたうれしい誤算でもある。しかし、ターゲットを見誤ったためにケチった開発費による障壁はどうにもならない。右ハンドル、すなわちヨーロッパでも最も大きな市場の一つであるイギリスに進出できないのである。これはこまった。車体の基本設計に起因するこの制約は後のいく度かのマイナーチェンジでもどうにもならない。日本で走るTwingoも左ハンドルである。

それ以外にも細部にコスト由来の不思議なところがある。内装には今時見ない外装と同じ塗装の金属フレーム剥き出しの部分があったり、前後ワイパーの操作レバーがヘンだったり、後部座席後ろトランク部分隠し蓋が安普請だったり。つい最近までパワステ装備車も無かった(このクラスではパワステ無しでも楽々脱足りする)。しかしそれを補う充分なデザインが行われている。おしゃれなシート素材、操作ボタン、レバー類の鮮やかな配色、ちょっとした収納スペースなど、やはり若者向けと言うよりフェミナンなファミリーカーの印象である。後にモデルが増え、色も基本色からパステルカラーまで充実し、パールメタリック-オパール状仕上げ塗装の最上級モデルも登場した。なんといっても居室、貨物室一体のモノスペースのデザインをこんな小さな車にまで持ってきたのは時代を先行していたのかもしれない。後部をフルに使うと驚くほど物が積める。

果たしてこれが秘話かどうか判断しがたい。車好きのフランス人ならしているかもしれないし、自動車業界なら常識かもしれない。聞いた話なのでどこまでが本当か、どこが脚色されているか定かではない。


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