モンサンミシェル/Le Mont Saint Michel
ユネスコ世界遺産にも指定されているあのモンサンミシェルである。
個人的な思い出ではあるが、まだフランスへの転勤が確定していないころ、そのころは東京都大田区の通称「梅屋敷」と呼ばれる地区に住んでいた。結婚を機に住みはじめたアパルトマンでは、お金を使って外に遊びに行くことが好きでなかった夫、妻ともにテレビを見る時間が長かった。モンサンミシェルとは何の関係もない話であるが、当時テレビの広告で、確かホンダのプレリュードだったと記憶しているが、モンサンミシェルの風景をつかっていた。そのコマーシャルが出るたびに、「ここに行こう、絶対行こう。」としつこいまでに妻に向かって言っていた。本当に行きたいのが半分、冗談で半分で言いつづけると、ある日たまたまこのコマーシャルが放送されているにもかかわらず黙っているのを見つけた妻が、「ほら、あれが出ているよ、今日は言わないの?」と言っていた。
ノルマンディー方面の牧歌的山道を抜けて、海が近くなり視界をさえぎるものがなくなると同時に目的地モンサンミシェルがぽっかり見えてくる。島と大陸を結ぶ道路は一本道で、両側はすぐ海である。しかし、潮の満ち引きの関係で絵葉書のように完全に海に囲まれて孤立した風景は大潮のときにしか見られない。普段は周囲が干上がっており、海際まで羊の放牧が行われている。一本道の右側の海が干上がった部分に駐車場がある。大潮のときには冠水するらしい。
島の入口は1か所、そこから入ると、両脇にはお土産屋、レストランが並ぶメインストリートとなっている。その他、美術館、島の歴史を見せる映画館、などなど。物価は下界より高めなので水やサンドイッチなどピックニックの準備をしていくのもよい。
お土産に興味がない場合は、どんどん歩こう。全ての道を歩こう。幅1メートルもない建物の隙間ほどの道もどこかに通じている。
どんどん上に昇ると、頂上の城の入口にたどり着く。入口の石段を登る前に円く深い大穴がある。穴の底には水を張った洗面器のようなものが置いてあり、みなそこをねらって小銭を投げている。
頂上の城は有料である。城の内部を昇ったり下ったり、隅々まで見学できる。見学コースは少々複雑にして不親切で、順路の番号があるものの見にくかったり、一部見学コースが交差しているところがあるためうっかりするとショートカットしてしまう。なにげなく自然にガイド付き団体客の後についていこう。説明も聞ける。このような城や宮殿の見学では正規のコースよりも、立ち入り禁止されている通路や地下への階段のほうが気になる。見学コース中間にある大聖堂はこの小島にしてこれほど豪華なものとびっくりである。
見学コースをまわり出てくるとちょっとした庭のような広場に出る。ここはピックニックに最適でみな手持ちのお昼ご飯を食べている。眼下の景色を眺めつつお昼ご飯は爽快である。海苔を巻いたおにぎりを食べていると注目の的だ。
城の見学コースにあった配布資料によると、8世紀はじめにはじまった修道院で以後10世紀にわたってどんどん工事が進み現在の形になったとのこと。フランス革命時には牢獄になったり、イギリスとの戦争時には不落の砦となり波瀾万丈のれきしがある。大天使Saint Michelにささげられた礼拝堂には今も祈りをささげるものがいる。
世界遺産という肩書きや神秘的なテレビの映像のイメージでくるとショックをうけてしまう。入口から続くお土産商店街はまるで江ノ島のようである。
お土産でノルマンディー名物のりんごの蒸留酒カルバドスを求めるならば、島のお土産屋で探すよりも、途中の道路沿いで見かける醸造所の直売店がよいかもしれない。
道路情報
Paris, Porte d'AuteilよりAutoroute A13-E05-E46をひたすらRouen、Cean方面へ。A13の終点CeanのPeripheriqueを外回りで市街の西側に回りN175-E401へ分岐。この国道N175は1999年初時点で並列に建設中のAutoroute A84が工事中で完成区間のみ運用されているので両道路が混在しており一見ややこしくなっている。Le mont St. Michel方面に分岐したあとは、D43、D75、D275と田舎道をどんどん進む。海が近くなり視界が広がってきたらもうすぐ。この最後の田舎道、本当に細い道にもかかわらず多くの観光客の車、巨大観光バスが通り、すれ違うので注意。
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