オルセー美術館/Musée d'Orsay



orsay1 パリはには巨大なルーブル美術館があり、オルセー美術館は観光ガイドではいつだって2番格扱いである。しかし、よほど美術品鑑賞に飢えている人やその道に詳しい人で無い限りルーブルはもしかするとオルセーだって楽しめないかもしれない。決して美術館が客を選ぶというわけではなくルーブルはとにかく馬鹿でかすぎて、もちろん好きな人なら3日チケットもアリだが民間人なら半日でぐたぐたである。しかも「目玉」は館内に点在している上にその回りは異常なほどの人だかりである。最近では観光ガイドブックに「モナリザはここ」なる地図までのっているそうだが。
美術はそれほど詳しくないがちょっとだけ興味がある、しかもパリの思い出に是非芸術の本場の美術館を訪れてみたいと言う方にはオルセー美術館がお勧めである。すみからすみまでじっくり見て回ると半日以上かかり、ルーブルほどではないがやっぱりぐたぐたになってしまうが、多くの人が「あっ、この絵見たことがある」、「たしか中学の美術の教科書に・・・」となんとなくニヤニヤしてしまうのである。バブルの頃とんでもない値がついた超有名な画家の絵画類を恭しく人ごみの間からガラスごしに拝むのではなく、物見遊山のお約束なんかでもなく、楽しい気分になってこそ観光であり、美術であり、芸術である。

orsay2 観光ガイドブックで良く見かける美術館全景はこれである。こんな感じで開放感ある明るい美術館なのである。この広さのヒミツは、やはりガイドブックに書いてあることだがここが昔鉄道のターミナル駅であったことである。恐らくこの長い縦方向にプラットフォームがあったのだろう。鉄道はもう廃止されて久しいそうだがかつてはパリ、オルレアンを結んでいたそうである。ではオルセーという名前はどこからきたのか?パリにある他の駅、リヨン駅、サンラザール駅、北駅、東駅、などの名に習うなら、最終目的地にちなんでオルレアン駅でもよさそうである。これは全くの憶測であるが、モンパルナス駅のあるパリ南端から直接ではなく南西からオルレアン方面に向かうと途中にオルセーという町があり、当初はそこが終着だったのかもしれない。現在ではRERのB4線に相当する当たりを走っていたのだろうか。

美術館のいろいろな所蔵作品を紹介したいところがだがそのようなものは美術の専門書におまかせしたいし、むしろ中学校、高校の美術あるいは歴史の教科書の方が手っ取り早い。美術館は3層構造で入口のある地上階はまずは小手調べ、その上は絵画のほかにちょっと毛色が変わって彫刻やアールヌーボー装飾品がある。下2層からずっと上にある最上階にはここを訪れる人のお目当てである、「印象派」の作品が勢ぞろいである。
まず驚くのは美術館の中は照明はあるが、結構な太陽光が注いだ自然照明が使われていることである。紫外線を含む太陽光線では作品が痛んでしまうのでは?と気になるところだが美術館には美術品管理のためのスペシャリストが常駐しているはずだし、絵も環境も最高の状態で見てこそ絵がいきるものだ。誰の目にも触れずくらいところで秘蔵されるために書かれた絵は絵ではないだろうし、そんなものはそもそもここに並ばない。この手の美術関連ウンチクには取っておきのマンガ「ギャラリーフェイク」細野 不二彦 (著)がおすすめだ。なお、館内でのフラッシュは厳禁である。がフラッシュさえ使わなければ写真撮影はOKである。

orsay4 写術的ではなく風景、被写体の印象そのものを捉える印象派の絵画は、極東の黄金の貧国からの輸出品にまぎれてきた浮世絵のような鮮やかな木版画美術が大きな影響を与えたそうだがここでそれが実感できる。左はそんな版画的フォーマットを模しておかしな漢字のような名前が入っているようだが。浮世絵スタイルでありかつこれよりずっと後、日本が西洋文化を咀嚼したあとの日本画のようでもある。パリから西ノルマンディー方面にあるモネの家には浮世絵コレクションがあるし睡蓮の池のある庭は日本庭園ということになっている。日本は日本の預かり知らぬところで文化的な影響を及ぼしていたのである。

有名なモネの絵である。
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ここはゴッホの作品。
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ルノワール。
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どれもこれも皆、一度どこかで見たことのある絵ばかりである。そべて本物がここにある。テレビや写真や本で見るのとは違う本物の迫力と感動などという安っぽいことではなく、「これがあの絵の本物なのか」といったくらいが丁度良いのである。現在30代以降の人にはこれらの絵画を日常的に見てきた人が大勢いるはずでそれはきっと食卓でのことである。そう、永谷園のお茶漬けに入っていた名画カードである。おっともせっせカードを集めては印象派のセットを当てんと応募したものだが結局当たらなかった。こんなことなら応募などせずにそのままカードを取っておけば良かったと後悔している。この名画カードがなくなったのはいつごろなのだろうか。ネットで調べると1997年までだそうである。
どうでしょう、お茶漬け美術を堪能できたでしょうか?もっとお茶漬け名画を訪れてその目で確かめたくなった人が次に足を運ぶ美術館は、アメリカ東海岸、ボストン美術館に違いない。

ついてにおっとお気に入りの数点
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美術館内はフラッシュさえ使わなければ写真撮影が可能である。実際結構な鑑賞者が思い出の名画をめいめいのカメラにおさめている。そこでふと思いついたのが、パリの観光地でも超特級でAAA+のオルセー美術館に来る観光客が所持しているカメラは一体どんなものか?というのである。館内を歩きつかれたので少々休憩をかねてカメラ種調査、定点観測をしてみた。場所は西側時計塔横の最上階、カフェお土産屋すぐ印象派の最初の部屋である。結果は・・・
orsay1 圧倒的にデジカメ多し。コンパクト銀塩通称「バカちょん」はほんのちょっと前なら間違いなく一位だったはずなのに。携帯電話カメラはその撮影スタイルの異様さもあって数の割りに目立つがそれほど多くない。「写ルンです」も多くは無いがある。意外なのは一眼レフが健闘していることである。中高年夫婦が往年の名機という想像通りのものがいくつか見られたが、ピカピカの電脳一眼レフを抱えた若き美学生風(美しい学生という意味ではないが美しくないというわけでもない)がほとんどであった。なおサンプル数95で、二重カウントを防ぐため一方方向の流れの人のカメラのみをチェックした。写生、スケッチをしていた人は定点観測ポイントから2人だけ見つけることができた。

道路情報
いつもはここにパリ基点の道路案内を書いているが、今回はパリ内なので・・・
最新情報はオルセー美術館のオームページ、www.musee-orsay.frへ。
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