マグロの頭


当サイトの掲示板で最古参にして最常連様の通称おじゃるさんの情報としてマグロの頭を入手、兜焼きを決行と妻が聞きつけてきた。二番煎じだがうまい具合に「頭」を入手する機会があったので試してみた。
行き付けのAuchan Vélizy2の魚売場はフランスのスーパーマーケットの魚屋としては最上級である。土曜日の朝には結構鮮度の良い魚が並んでいる。そして重要なのは、魚売場が店の辺鄙な片隅に追いやられて薄暗いということが無い事である。
マグロはどうも夏が旬のようでバカンスシーズンが近づくといいマグロが店に並び始める。地中海産らしい。いいマグロも量販店は切られた後の鮮度が重要である。交渉次第でその場で新マグロからおいしい部位を切り分けてもらうことも可能だが、さもなければ売り場の切り身を品定め、店は決して生食用として売っていないので食べた後のことはすべて個人の責任。おいしそうに見えるのはたいてい新鮮で当たることはない。

thon1 前置きが長くなってしまったが、これが入手した頭である。注文のうるさいフランス人客3組(後述)の後ろにいたため新マグロ解体現場に出会わせることができた。値段はなんと無料である。ウチが引き取らなければこの頭もごみ箱行きである。以前日本のテレビで見たマグロ料理店での兜焼きの値段は結構なものであったと記憶している。それがタダである。タダの頭だけを貰って帰るのも恐縮なので刺身になりそうな切り身も貰う。

thon2 そしてこれが兜焼きである。残念なことにウチのオーブンは小さく、頭を丸ごと焼くことは出来ない。頭を中心から2つに割り、エラ後ろのカマを切り取り半身兜焼きになっている。と、書くのは簡単だがここまで解体するには結構な手間と時間がかかる。あまりに大変だったので次に頭を入手する機会があったとしても貰うかどうか定かではない。味はなかなかの珍味である。

thon3 これがカマ焼きの部分。このサイズになるとオーブンではなく電気魚焼きグリルの出番である。兜焼きが珍味であればこれはかなりの美味である。エラ蓋周りの脂の多い締まった肉はパサパサしがちな本体の肉とは別物である。それにしてもこのサイズ、マグロほどの大物になるとカマ焼きも結構なボリュームである。

thon4 ちなみに申し訳なさそうにいっしょに買った刺身はこれである。添え物の大根の千切りは残念ながら白大根が手に入らなかったためパサパサする黒大根のものである。この日の夕食には親子3人で半兜、1カマ、そしてこの刺身が食卓に上った。予想以上に可食部の絶対量が多い頭にすっかり飽きてしまい、さらに刺身となるとほとんど中毒である。その後、未調理のまま残る半兜の可食部、反対側のカマ、刺身半分は冷凍庫行きとなった。無料頭のおかげでうんざりするほどのマグロ三昧の夕食であった。

さて、無料頭を入手するに当たっての裏話である。マグロを求める行列の前3組はいずれもフランス人で刺身か寿司かで生食を狙っていた。彼らが揃って狙っていたのは、頭のすぐ後ろの三角錐に切り取られる部分である。フランス人には脂身の最も少ないここが好まれるようである。もちろんこの部位はマグロ1匹から左右一個づつの2個しかとれない。前三組がこの部分ばっかり注文するのでそのたびに真新しいマグロが冷蔵室から出てきて頭が切り落とされ捨てられていたのである。余りにわがままな客とそれに応じる店員に唖然としながらも最後の1匹のときに「それ下さいな」となったのである。
当然ながら店員や付近の客は「一体何に使うんだ?」と質問攻めである。エラ蓋裏の肉やほほ肉は魚で最もおいしい所だの、目玉のDHAだの説明すると不思議そうな顔で聞いていた。反応が面白かったので日本人は脂の多い大トロを好むとか「中落ち」なんかも説明したがこちらには拒否反応がでた。魚の脂はまるでダメらしい。

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